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AIによる運動指導の可能性

2022.05.03 指導のくふう

Yasuです。

先月はスタジオ8周年を迎えました。その日を迎えることができたのは、ご利用中そしてこれまでご利用頂いた皆さまのおかげです。今後ともよろしくお願いします。

さて8周年を迎える少し前にスタジオのホームページを新しくしました。そこでは私たちの指導スタイル(こだわり)を「Ola式指導メソッド」という表現でまとめてみました。

さて、最近は「AIによって代わる仕事は何か?」という議論をよく聞きますが、「Ola式指導メソッド」はAIにとって代わるものなのでしょうか?少し考えてみました。

AIによって取って代わる仕事とは?

パターン化しやすい仕事が代わりやすいと言われています。DIAMOND ONLINEの記事によれば、一般事務や電話交換、清掃などは代わりやすいとも・・・。今そうしたお仕事に従事している方からすれば、異論もあると思いますし、仕事のやり方次第であるとも思います。

そもそもAIとは?

Artificial Intelligence、人口知能と訳されます。この言葉は、僕が理系学生だった1980年代、すでに学部の講義で一般的に使われていました。Wikipediaによると1950年代に産まれた言葉らしい・・・。

コンピューターを使った学習により、解釈や問題解決、推測に使われます。近年、AIが再び脚光を浴びたのは、計算速度の向上、画像などのセンサー技術の向上、ネット技術の発展、データ蓄積能力の向上など、IT技術の進化が関係しています。

僕の前職では、データを利用した株式運用を行っていて、人によるチューニングは行うものの、ある種のAI運用でした。学生時代からコンピュータープログラムを書くことは普通でした。何が言いたいかというと、AIにはそれなりに接してきたということです。

AIにもいろいろある

ところで、膨大なデータを駆使して予測をする場合、過去のパターンから予測を行うことになります。ほとんどの場合、確率的に多く発生する例を探します。確率と言えば統計学ですね。

また、過去のパターンと違った場合に、AIが自らのプログラムを自己修正することをラーニングと言います。このラーニングにより、未だ見ぬ事象を推測することもできる、という説があるようです。ただし、実際に起きる出来事には幅(多様性や偶然性)があるので、違ったら違いました(イレギュラーです、異常値です)と解釈することになるのでしょうか。

いずれにしても、常に100%ではないということを忘れてはいけません。(確率が高いことと確実とは異なります。)

運動科学におけるAIの可能性

私たちがピラティススタジオで行っている仕事は多岐にわたりますが、運動の目的を「姿勢の改善」に絞ったとして、パターン化できることはどれくらいあるのでしょうか?

例えば、猫背の人がいます。頭や骨盤など骨の位置を測り、特定の筋力(の弱さ)と弾力性を数値化し、生活習慣をデータ化すれば、やるべきエクササイズをAIで指導することが可能でしょう。一定期間ごとに同じデータを測って、エクササイズが正しくできているかをチェックして、指導しなおすこともできるでしょう。

骨の位置は、画像認識システムで行えます。商用化されているものも多いです。簡易的なものが多いようですが、背骨1つ1つを解析できる医療用のものも出ています。

筋力や弾力性は、実際にシステムが筋肉に触れる必要があります。バンドなどで電極を固定する形式が多いようです。ただし、インナーマッスル(身体の深層部にある筋肉)は測れないので、表層から推測するしかありません。

生活習慣は、常にケータイかApple Watch的なものを身に着けて計測すれば、できそうですね。

商用化されている姿勢評価システム

背骨1つ1つのレベルではなく、おおまかな骨の位置を読み取るシステムはすでに一部のスポーツクラブや整骨院などで実用化されていて、弱い筋肉のエリアを指摘する機能まで付いているようです。

わたしたちは、背骨の形状を読み取って筋力の歪みや動作の癖を推測したり、インナーマッスルを含めてトレーニングを提供するので、現時点で商用化されているものよりは多くの情報を使っていると思います。

この先、5年、10年と時間が経過すると、画期的な技術が出てくるでしょうか?

AIの限界を考えてみる

猫背の例に戻ります。私たちが指導する背筋のエクササイズは、一定比率の方が「背中の筋肉の感覚がない」状態でスタジオに通い始めます。

私たちが指導するときは、手で筋肉に刺激を与えるなどの外力を利用しますが、AIがそれをやってくれる日はまだまだ先だと思います。

また、猫背を修正したいがために、「自ら肩を引いて姿勢を良く見せる方」も一定比率います。その結果、首の痛みを訴える方や反り腰を悪化させる方もいます。

AIでその状態を察知して指導することは可能だと思いますが、人間の身体は一つを変えると他のところに影響が出るので、猫背だけを直すAIは意味がなく、最初から全身を見るシステムに仕上げる必要がありそうです。

猫背の原因は、猫背が起きている場所だけではありません。足(アーチ)の崩れから来る場合、肩の位置から来る場合など、原因には多くの可能性があって、同時進行的に問題を特定してアプローチする必要があります。

原因が探れたとしても、エクササイズを行うのは人間です。道半ばで気持ちが折れるなど、こころの要素もあるので、AIの守備範囲はかなり広くする必要があるでしょう。

個性をどう折り合わせるのか?

人の身体は産まれながらにして異なっていて、その人その人のバランスを保って生きています。日々多くのお客さまと接していると、骨の大きさ、筋肉の大きさや付きやすさ、左右の差、足(足首より下)と下半身のバランス、関節の柔らかさなど、挙げたらきりがありません。

つまり産まれながらにして個性のかたまりであり、身体に関しては「みんな同じ」という概念はありません。

だからこそAIで膨大なデータ処理を行わせる余地があるのだと思いますが、言い方を変えるとAIが指導するような身体に僕たちはなりたいのだろうか?画一的な身体に落とし込まれることを良しとするのだろうか?、という疑問がわきます。

Ola式指導メソッド

わたしたちが、日頃レッスンで意識していることを分解してみたところ、7つの特徴があるようだと整理したものが「Ola式指導メソッド」です。では、この7つをベースに、ピラティス指導の教科書にしたら誰でも同じレッスンができるかというと、それは「ならない」と思います。

AIが指導するレッスンによって、画一的な身体に落とし込まれるかもしれないのと同様に、「メソッド」が指導するレッスンによって、何か1つの形に導かれるのは、レッスンを受ける人が望んでいるものとは思えないからです。

わたしたちは、お客さんの過去の出来事をお身体の状態やお話で汲み取って、今の気持ちや潜在的な意識を感じ取りながら、レッスンを行っています。ときどきですが、予期せず想像以上に良い結果が得られることに出くわすことがあります。その逆に、試していただいたけど「今はこれじゃないな」という例もあります。

AIが苦手なのもこういうところなのだと思います。

人間の体の複雑さ

コロナ禍により本来渡航しないと学べなかった海外の解剖学に触れる機会が増えました。人間の体を実際に見て思うのは、たくさんある骨や筋肉、靭帯は相互に関係しあっています。姿勢の例で言えば、それぞれのパーツの張力や位置によって、構造物の形が変わってくることを想像してみてください。

トランプ 身体の構造

その関係が立体的に積みあがっているのが人間です。「人間の体はたくさんの三角形の構造が積みあがって成り立っている」と先生が話していたのが印象的でした。つまり、わたしたちの体は本来不安定な存在で、それを維持することは大変な作業だということです。

ちなみに、AI(人口知能)をプログラムするのは人間ですが、ラーニングするAIが仮にどんどん発展するとして、もはや人間ではない知的生物がコントロールする世界はどうでしょう?彼ら/彼女らに人間の体の痛みや気持ちが分かってもらえるでしょうか?なんかSF漫画のストーリーっぽくなってきたので、この辺で想像を掻き立てるのを止めておきます!

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