ゴルフは身体を動かす運動
Yasuです。
ここ5年くらい、自分が行っているピラティス以外の運動と言えば、ゴルフ、ジョギング(ランニングと言えるほど速く走っていない)、パーソナルトレーニング、スキーです。なかでもゴルフは、以前の記事に書いたように、「昔上手くできなかった」反動みたいなものがあって、気が付いたら練習場やコースに足を運んでいます。
従来、自分の体調を維持してきたのがランニングだったのですが、ここ数年は心拍数が上がりやすくパフォーマンスが思わしくありません。今は、トレーニングそのものから見直している最中なのですが、なかなか状態が上向かない中で、代わりにゴルフが健康の維持に役立っています。
Olaの事業的には、「ゴルフは生涯スポーツ」「体力差や年齢差があっても一緒にできるのがゴルフ」「ゴルフを健康にできるようサポートしたい」という想いがあります。以前より、ゴルフを趣味にしているお客さまが多く来店され、ピラティスのレッスンでいろいろな提案をしてきましたが、平行して自分たちも楽しく続けたいという気持ちが年々高まっています。
ゴルフの記事をそれなりに書いているような気がしていたのですが、あらためて振り返ると、ほとんど書けていませんでした。この記事を一つのきっかけに、時々書いていこうと思っています。
そもそもゴルフのことを分かっているのか
ゴルフの記事を書いていなかった理由の1つに、自分たちは「そもそもゴルフのことを分かっていないのではないか」という考えがありました。ゴルフが上手い=スコアが低いと言われており、実際もそうなのですが、「上手いこと」と「分かっている」ことはまた別の話です。
いや今後も「分かっている」とは言えないのですが、トレーニング指導者の立場から言えることはいろいろ言っても良いのではないかと思えるようになりました。このことは、今年の前半、怪我をきっかけに新しいゴルフの先生との出会いがあり、捉え方が変わったこととも関係しています。
その捉え方については、いずれ機会を見つけて表現したいと思うのですが、今回記録しておきたいのは、ゴルフはスポーツ/運動であり、よりよく身体を使うことが健康的にも技術的にも大事ですよ、という話です。
「いや、当たり前じゃん」という反応がかえってくると思うのですが、そうでもない側面を感じるのです。例えば、たくさんのゴルフに関する記事や動画の中には、クラブヘッドの軌道がこうとか、フェース(ゴルフクラブをテニスラケットに例えるとしたら、その面にあたる部分)の角度がこうといった、道具の扱いについての指導が多く、それを身体がどうやって実現するか/再現するかという視点が相対的に少ないと感じます。自分が受けた過去のレッスンでも、そうした指導だった印象を持っています。
余談ですが、前半と後半の間(昼休み)にアルコールを取る人が多いのもゴルフでよく見る光景です。そのことがゴルフは運動という現実から遠ざけているような気もします。(驚くべきことに、前半の前、まだ朝なのに飲み始める人もいる!)いろいろな楽しみ方があって良いので、この話はこの辺にしておきましょう。
弾道測定技術の恩恵と弊害
ゴルフボールはなぜ曲がるのか?この解析に一役買っているのが弾道測定器です。ヘッドの軌道とフェースの角度で、だいたいのことが説明されるようになりました。
ところで、クラブを操作するのは人間であり、身体がどう動けば理想的なヘッド軌道になるのか、フェースの角度が改善されるのか、というような説明は、レッスンによってはあまりなかったりします。代表的なアドバイスに「クラブを8の字に使えば良いから右脇を締める」とか「右の手首や前腕を回旋していけばフェースが閉じる(左を向く)」があります。これは確かに身体のことを言っているのですが、その程度やタイミングについては、先生の感覚的なものに頼っていて、見本を見て真似をしようと試みるものの、再現性を高めるのにはかなりの練習量が必要だと思っていました。
弾道測定器の数値がボールが曲がる原因を説明できるのに対して、身体の使い方は先生の感覚的な指導になることに、矛盾を感じていました。感覚的な指導の何が良くないのかと言うと、筋力や運動神経の働き(脳が指令を発して身体が反応する速度)は人によって違うので、その違いが「できない」「再現できない」というフラストレーションになりやすいのです。
こうなる原因は複数あると思うのですが、1つは運動の先生はその競技が得意だから先生になったケースが多く、最初から出来てしまっていることが挙げられます。(ピラティス業界にも多いです。)もう1つは、身体感覚は人によって違うので、先生が言語化した内容は他の人には当てはまらないとか、そもそもその言語が通じない場合があるということです。(これもピラティス業界でよく見ます。)
弾道測定器よりもゴルフの方が昔からあるので、ゴルフのための身体の使い方は、昔から変わらないものがあって、本質的な部分というのがあると思うのです。クラブもボールも進化しているので、その進化に合わせた身体の使い方の変化はあると思うのですが、本質的/基本的に身体はどう動くべきかという指導があって欲しいと思います。
ちなみに、先に触れた自分の怪我については、身体の使い方を見直していく中で快方に向かっています。
弾道測定器の存在を否定したいのではありません。僕も簡易的な測定器は使い続けています。練習で起こった結果(例えば、ボールが右に行った)の理由を知ることで、身体の何が足りなかったのかを考えることに役立てています。
多様なスイング理論とトレーニングの関係
ゴルフは自己流ではうまくなれそうもないな、と6年ほど前に始める前から思っていて、ゴルフの先生にスイングを習ってきました。通っていたスクールの閉鎖などがあって、結果としていろいろな先生から習うことになったのですが、そこで分かったのは「スイングの理論は、いろいろある」という一言につきます。
野球の投手がいろいろなフォームに行き着くことや、マラソンランナーの走り方が異なるように、他競技でもいろいろな理論があると思われるので、これは普通のことだと言えます。どの競技でもそうなのですが、自分の身体(骨格や筋肉、神経系をすべて含みます)や性格にあった理論に、いちはやく行き着くことができたら、どんなに素晴らしいことかと思います。
スイングの理論がたくさんある中で、再現性にかかわる身体の使い方が説明されることが少ないという問題は、書いてきたとおりです。そのようなフラストレーションがたまる状況下で、ゴルフはスポーツだから、トレーニングに活路を期待するという流れがあると思います。(もう1つ、ゴルフに占める飛距離の重要性や誘惑というのも大きくあって、それが人々をトレーニングに向かわせます。)
一般的なトレーニング現場から見たら、その人がどんな先生から何を言われたかが分からないので、スイング理論そのものには踏み込まないと思います。また、トレーニングのトレーナーはゴルフのコーチではないので、スイング理論に踏む込めないという現実もあります。仮に、トレーナーがゴルフ指導の有資格者だとしても、スイングを教えている先生と意見が割れることを避けるでしょう。
わたちたちも、ゴルフのお客さまをたくさん担当していますが、お客さまが何を課題にしているかを聞いてからトレーニングを設計します。それと平行して、さまざまなスイング理論に共通した要素をトレーニングで行います。
このように整理すると、ゴルフの先生から「身体の使い方のここを改善してほしい」と言われることはすごく大事です。使い方とは、動作に限らず、身体の安定性とか、姿勢なども含みます。
ただトレーニングしても結果は出るが
ちなみに、ここまで書いたことは理想論であって、トレーニングはトレーニングとして、独立して行ってもおそらく結果は出るし、何だったらセルフでトレーニングしてもそれなりの効果は出ると思います。なぜなら、ゴルフは身体動作であって、筋力や筋持久力がある方が有利に働くことが多いと期待されるからです。
昭和の時代の部活動の練習と言えば、競技にかからわず「とりあえず走る」でしたが、それと同じようなものです。いまのゴルフに対して言えば、歩く、走る、スクワットを行う、ストレッチを行う、ことをすれば、何もやらない場合と比べて効果は出るでしょう。
「より効果を出したい」「より理解したい」のであれば、せっかく習っているゴルフの先生から課題をもらって欲しいのです。
ピラティスでできること
「ピラティスは体幹にいいんでしょ?」ということで、ピラティスをトレーニングに取り入れる方も多くいらっしゃいます。ピラティスに関しても、とりあえずピラティスを行えば、それなりの効果は出ると思います。グループレッスンでもそれなりの効果はあるでしょう。体幹の強化だけでなく、柔軟性の向上を通して身体が回しやすくなったり、猫背が減って肩が回しやすくなると期待できます。
しかし、せっかく時間とお金を使うのだったら、より効果を出したいところ。わたしたちだったら、スイング理論に共通した要素として、下半身を(一般的なピラティスのレッスンよりも)多めにトレーニングして、身体の土台を高めようとします。Olaのスタジオセッションでは、お客さま個人にあわせてエクササイズをプログラミングするので、下半身と言ってもそのお客さまにとっては足なのか、股関節なのか、大腿などの筋力なのか、を見極めながらエクササイズを提案します。
それ以外にも肩や肩甲骨の可動域を高めたり・・・などいろいろなアイデアを持っています。ここでも理想を言えば、スイングを習っているゴルフの先生から課題をもらってきて欲しいですね。
ゴルフは身体動作/運動
ゴルフは運動なので、技術と同様に身体のコンディションに目をむけるという最近の流れには大賛成です。理想を言えば、ゴルフの先生は運動の先生でもある訳なので、ゴルフスクールで筋肉の説明とかトレーニングの提案とかが受けられたら良いのですけど。
身体が動けば、そしてスイングが良くなれば、ゴルフのスコアアップにつながる可能性が高い。身体が安定すれば、アプローチやパターなどのショートゲームが安定する可能性が高い。
ごくまれに練習場とかスクールに、スクワットのラックがあったりトレッドミルが置いてあるのを見ることがありますが、それはかなり良い環境だと思います。いずれ、そうした環境が普通になっていくと良いかなと思います。
ピラティスを教えていると、天性(野生?)の勘で動けてしまう人がいるのですが、その比率はごくわずか。僕の印象だと一桁前半パーセント。天性の勘がある人は、専用のトレーニングを行わなくても、動きが出来ていくので、ゴルフだったらボールを打つことで必要な筋力や動作が鍛えられていくでしょう。
しかし、大半の人は動き方を理解して、その後に何回も何回も反復練習をすることで自分のものにしていきます。ゴルフのためのトレーニングも、そしてゴルフのスイングも同じ。基本的な身体の使い方や柔軟性の向上を身につけることはとっても大事です。そして、年齢が上がるほどその重要性は高くなると言えます。